ChatGPTで患者説明資料・お便りを作る ― 個人情報を入力しないための4ステップ

退院指導パンフレット、検査前の説明資料、季節のお便り、訪問看護の利用者向け案内文……。患者さんやご利用者に「渡す」文章づくりは、看護師の業務の中でも地味に時間を取られる仕事の一つではないでしょうか。この記事では、生成AI(ChatGPTなど)を使って患者説明資料やお便りのたたき台を作る手順と、何よりも大切な「個人情報を入力しない」というルールを、看護師目線で整理します。

患者説明資料・お便り・案内文づくり、地味に時間を取られていませんか

退院が決まった患者さんに渡す食事管理のポイント、検査前に読んでもらう注意事項、季節ごとに配る施設だよりや利用者向け案内文――こうした「渡す文章」は、日々のケアと違って直接的な処置ではないぶん後回しにされがちです。それでいて、いざ作ろうとすると「どこまで専門用語を使っていいのか」と迷い、思いのほか時間がかかった経験がある方も多いのではないでしょうか。

看護師向けのメディアでも、こうした資料づくりは「意外と時間のかかる業務」として繰り返し取り上げられています。ただし定量的に調べた公的な統計や学術調査は見当たらないため、ここでは「多くの看護師が負担に感じている業務の一つ」という体感レベルの話として受け止めてください。こうした「たたき台づくり」にChatGPTなどの生成AIを取り入れる看護師が増えてきています。ゼロから文章を組み立てるのではなく、AIに骨組みを出してもらい看護師が中身を整えていく――そんな使い方であれば無理なく取り入れやすいはずです。

生成AIでたたき台を作る「4ステップ」

生成AIに患者説明資料やお便りの案を作ってもらうときは、次の4ステップを意識すると、実務で使える形に近づけやすくなります。

ステップ1 想定読者を明示する

まず、誰に向けた文章なのかをはっきり伝えます。「70代の高齢者向け」「独居の在宅療養者向け」など、年齢層や生活状況をプロンプトに含めると出力の的が絞られます。大事なのは、実在する特定の患者さんの情報ではなく、あくまで「属性」として一般化した読者像を伝えることです(次の章で詳しく扱います)。

ステップ2 出力形式を指定する

「箇条書きで」「見出しを3つに分けて」「A4用紙1枚に収まる分量で」など、欲しい形式を具体的に指定します。何も指定しないと長い説明文が返ってくることが多いため、形式指定を最初から入れておくのがおすすめです。

ステップ3 平易化の追加指示

たたき台ができたら、「この文章を80歳の方にもわかるように、専門用語を避けて書き直して」のように読みやすさを高める追加指示を出します。一度で完璧な文章が出てくるとは限らないので、「もう少し短く」「漢字を減らして」とやり取りを重ねながら調整するイメージです。実際に試してみると、専門用語をどこまで崩してよいか判断に迷う場面もありますが、たたき台自体は思っていたより短時間で形になる印象があります。

ステップ4 看護師による最終確認

最も重要なステップです。AIが出した文章をそのまま配布せず、看護師が次の3点を必ずチェックします。

  • 医学的な内容に誤りや古い情報が混ざっていないか
  • 個人情報や、個人が特定されうる表現が含まれていないか
  • 「〜すれば治る」「絶対に安全」といった断定的すぎる・誤解を招きうる表現になっていないか

AIの出力はあくまで一般論としてのたたき台であり、医学的な正確性や患者さんへの個別の適合性を最終的に担保するのは看護師の役割です。この位置づけは、生成AIがどれだけ便利になっても変わらないと考えています。

【中核メッセージ】個人情報は入力しない ― 匿名化・一般化の具体例

生成AIを患者説明資料づくりに使ううえで、最も気をつけたいのが「個人情報を入力しないこと」です。

入力してはいけない情報の例

氏名、生年月日、患者ID・カルテ番号、特定の個人を識別できるような詳細な既往歴や生活状況(例:「〇〇市在住の〇〇さん、〇年〇月〇日入院」)は、プロンプトに含めてはいけません。これらは個人情報そのものであり、入力した時点で施設外の第三者システムに患者情報を渡すことになります。

匿名化・一般化した設定に置き換える書き方

代わりに、属性だけを抜き出した一般化された設定でプロンプトを作ります。たとえば次のような対比です。

入力してはいけない例:「〇〇太郎さん(78歳、〇年〇月〇日生まれ、患者ID12345)向けの退院後の食事指導資料を作って」

入力してよい例:「70代・独居・軽度の心不全がある方向けに、退院後の食事管理のポイントを箇条書きで作って」

後者のように、年齢層・生活状況・病状の程度といった「属性」のみを伝える形にすれば、特定の個人を識別できる情報を渡さずにたたき台を作ることができます。この一手間を習慣にすることが、情報漏えいのリスクを避ける一番のポイントです。

なお、ここで想定しているのは個人が業務の合間にChatGPTなどの一般向け生成AIを試すケースです。施設契約の医療特化型AIサービスならより厳格な情報管理体制のこともありますが、いずれも業務利用の可否は自己判断せず、次章のルールに沿って確認しましょう。

生成AIの出力をそのまま使わない

生成AIは、もっともらしい文章を作るのが得意な一方で、事実と異なる内容を自信満々に出力したり、「これをすれば治ります」といった断定的な表現を招いたりすることがあります。生成AIが作った文章は「一般論としてのたたき台」と捉え、医学的な内容は必ず院内の標準資料・診療ガイドライン・医師の指示など一次情報で裏取りし、そのままコピーして配布することは避けてください。

押さえておきたいルールの全体像(詳しく知りたい人向け)

生成AIを医療・ヘルスケアの現場で使う際に関係しうる制度・ガイドラインもいくつかあります。名称と位置づけのみ簡潔に紹介します(詳細は一次情報でご確認ください)。

  • 医療・ヘルスケア分野における生成AI利用ガイドライン(HAIP策定): 情報漏えいや不正確な情報などのリスクを整理したガイドライン
  • 医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス(厚生労働省): 個人情報の取り扱いに関する指針
  • 3省2ガイドライン: クラウド等外部システム利用時の安全管理を定めたもの

いずれも生成AI自体を名指しする法令ではなく、既存の医療情報セキュリティ・個人情報保護の枠組みの延長線上にあります。実際の運用にあたっては、必ず所属施設のICTポリシー・情報セキュリティ規程を確認し、生成AIの業務利用が許可されているかを確かめてください。

ゼロから作らない工夫 ― 院内の既存資料をたたき台にする発想

「同じ指導内容のパンフレットがすでにある場合は、一から作らず個別性を加えた補助資料を作成する」という効率化の工夫は、看護教育の現場でも紹介されており、生成AIにも応用できます。「既存の標準資料を土台に、言い回しを平易にしてほしい」と依頼すれば、資料の質を保ちながら個別化・平易化の部分だけをAIに手伝ってもらえます。既存資料はそのまま貼り付けず、要約・一般化したうえで依頼し、ここでも個人情報の混入がないか確認してください。

まとめ: AIは「たたき台」、最終判断は看護師が担う

患者説明資料やお便り、案内文づくりに生成AIを取り入れることで、たたき台作成の負担を軽くできる可能性があります。ただし、それはあくまで「たたき台」であり、医学的な正確性の確認・個人情報のチェック・断定的な表現の見直しは、最後まで看護師が担う仕事です。まずは「想定読者の明示 → 出力形式の指定 → 平易化の追加指示 → 看護師による最終確認」という4ステップを、個人情報を含まない匿名化・一般化した設定で試してみることから始めてみてはいかがでしょうか。

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